奥沢の家 / House in Okusawa































東京都世田谷区に計画をした個人住宅。
施主からの要望は夫婦と新しい家族が人目を気にすることなく、都市部でもカーテンレスで快適に明るく暮らすことが出来る空間であること。また、リゾートホテルのような非日常性を感じながらリラックスして過ごすことが出来る住まいであった。
先ず敷地を確認した際に南東に集合住宅の駐車スペースがあり、都市部でありながら隣棟間隔に開けた環境があることが分かった。1階は駐車スペースからの人の目線があることから主たる空間となるLDKは2階に配することでプライバシーを確保しやすくなり、風通しが良く見晴らしの良い眺望がある空間となる。また低層住居地域の法規制である斜線制限をクリアできるギリギリの外形とすることで天井高の高い開放的な家族の居場所のイメージを膨らませていった。
そこで天井高が高く、各部に多くの開口部を設けた自由で大きな空間を耐震性能を確保しつつ如何に実現するか。ということが次の課題であったが、耐力壁や水平構面の工夫に加えて、一部に鉄骨の梁や柱を採用しながら、部材の寸法を抑えつつ位置や見え方の意匠性を慎重に検討した。
内外の各部にはインドネシア産の3種類の石材を採用し、各部の仕上げはホワイトやグレーを基調とたインテリアやエクステリアとしている。また、キッチン周りには木材を染色塗装した部材を用い、床材も質感がある木や本物のタイルとすることで、石材・木材・スチール・セラミックなどの素材が調和した空間を目指した。
またこの住宅のもう一つの魅力は昼と夜の表情の変化である。明快な空間構成とシンプルな仕上げ材としているが、各部にある石材や壁面を最小限かつ効果的な照明演出によって照らすことで印象的な風景を生み出すことが出来る。外観デザインにおいても斜線制限によって切り取られるボリュームを受け入れながら、ファサードに奥行きと立体感を与え、その奥行きのデザインが夜になると照明の明かりを受け止めて幻想的な表情を魅せるように工夫している。
この住まいがご夫婦と新しい家族が健やかに暮らすことが出来る器となり、街並みにも新たな息吹と潤いを享受するものになると考えている。
所在地:東京都世田谷区
用途:戸建住宅
クライアント:個人
竣工:2025年
工事種別:新築
構造:木造 地上2階
敷地面積:128.49㎡
建築面積:75.85㎡
延床面積:146.34㎡
プロデュース・施工:大熊工業(カジャデザイン)
設計・監理:小倉大助(小倉建築計画工房)
構造設計:茨田一平・渡辺哲平(DNアーキ)
照明デザイン:横橋英司(シーン2)
写真撮影:木谷元