家づくりで迷う理由とは?建築家と見つける「住まいの核」

家づくりをしていると、「結局、自分たちはどうしたいのだろう」と立ち止まる瞬間があります。
そうした迷いのなかで、ひとつの手がかりとなるのが「住まいの核」です。
私たちは、この住まいの核を意識しながら、日々設計を行っています。
なぜ家づくりは迷ってしまうのか
「SNSでよく見かけるスマートハウスって良さそう」「インフルエンサーがおすすめしていたから、太陽光や蓄電池を入れようかな」。家づくりに関する情報が溢れている今、目にするたびに、どれも必要に思えてくる方も多いのではないでしょうか。情報を得るほど選択肢も広がりますが、その分判断が難しくなります。
また、「これをしないと後悔する」といった投稿も多く、失敗したくないという不安から、できるだけ多くの要望を取り入れたくなるのも無理はありません。その結果、何を優先すべきか分からなくなってしまうのです。
「何を選ぶか」で、住まいの印象は大きく変わる
家づくりの打合せを重ねていくなかで、「あれもしたい」「これも取り入れたい」と要望が増えるのは、ごく自然なことです。しかし、すべてを叶えたとしても、それが素敵な住まいや暮らしやすさにつながるとは限りません。
一つの強い要望を軸にした家と、多くの要望を取り入れた家では、印象が大きく異なります。
強い想いは、その家ならではの個性を生み、魅力を際立たせます。一方、要望を取り入れすぎると、便利ではあるものの、住まいの印象はぼやけていきます。気づけば、空間に余白がなくなり、どこにいても落ち着かない家になってしまうこともあります。
こうした違いを生むのが、「住まいの核」です。住まいの核とは、「こんなふうに暮らしたい」という想いを指します。
この軸を意識するだけで、迷った際にも立ち返ることができ、判断に一貫性が生まれます。さらに、それぞれの要望に優先順位をつけやすくなり、「やらない」という選択もできるようになります。
住まい手の想いを整理し、「何を選ぶか」「何をやらないか」を一緒に決めていく。それが建築家の役割です。
建築家と見つける住まいの核
建築家と聞くと、感性で空間をつくるイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際は整理の積み重ねによって、住まいをかたちにしていきます。家づくりの過程で迷いが生じたときに「これを大切にされていましたよね」と判断軸をあらためて示していくのも、建築家の役割の一つです。
私たちはヒアリングの際、家族構成や部屋数より先に「なぜ家づくりをしようと思ったのですか?」とお聞きします。「子どもが生まれて、家が手狭に感じた」「もっと家族と過ごす時間を大切にしたい」。そのきっかけのなかに、理想の住まいのかたちが含まれているからです。
こうした対話を重ねていくなかで、住まい手自身も気づいていなかった想いが少しずつ輪郭を帯びていきます。
まず、住まいの核となる大きな要望を捉え、そのあとに中くらいの要望、小さな要望へと樹形図のように広げていきます。たとえば、「家族と過ごす時間を大切にしたい」という想いを軸に、リビングの広さや配置、庭との関係性といった具体的な要素へとつなげていきます。
すべて同じ重さで扱うのではなく、何が核となるのかを見極めながら整理していくと、家づくりの方向性が少しずつ明確になります。
要望の本質を見極める設計
こうして進めていくと、何を優先すべきかが見えてきます。たとえば、開放感を求めて20畳以上のリビングにしたいとの希望があっても、ほかの要望の兼ね合いや面積の制約によって実現が厳しい場合もあります。
そのときは、収納やほかの部屋から面積を少しずつ調整しながら、可能な限りリビングの広さを確保します。さらに、窓の配置や吹き抜けによって視線の抜けをつくり、面積以上に広がりを感じられる空間に仕上げていきます。
この希望の本質は、広さではなく、開放感にあります。たとえリビングが18畳しかとれなかったとしても、設計の工夫次第で20畳以上の開放感をもたらすことは十分可能です。
住まい手が何を求めているのかを見極めていくと、限られた条件の中でも、満足度の高い住まいを実現できます。

「どれだけ叶えるか」ではなく、「何を大切にしたいか」
たくさん詰め込んだ家よりも、住まいの核を意識して整理した家の方が、暮らしにすっとなじんでいきます。それは、「なぜそれを選んだのか」といった理由が明確になり、納得感が得られるからです。自分たちで選び抜いた住まいは、より愛着の湧く存在となり、いつまでも家族の記憶に残る場所になります。
家づくりは「どれだけ叶えるか」ではなく、「何を選ぶか」の積み重ねです。「何を大切にしたいか」と向き合いながら、一つひとつ丁寧に選んでいく。そのプロセスが何よりも大切です。そうして選んでいくうちに、家づくりはいつの間にか楽しい時間へと変わっていきます。