コラム

平屋スタイルで叶える、庭とつながる暮らし

窓を開けると緑と光がすっと入り、テラスへ一歩出れば深呼吸がしたくなる。平屋は上下移動がなく、庭との距離が自然と縮まる住まいです。

本稿では、庭を「余白」ではなく「暮らしの舞台」に変える設計の考え方を、横浜の敷地事情や気候を踏まえて解説します。 途中に図解と表を織り交ぜ、読みやすく整理しました。

これは横浜の設計事務所が提案する住まいづくりの視点に立つガイドです。

庭とつながる平屋が心地よい理由

ワンフロアの直線性が「屋内外の回遊」を生む

平屋は、LDK—テラス—庭の連なりを水平に描けます。段差や階段がないため、食事・洗濯・見守り・在宅ワークといった日常行為がスムーズに庭へ広がります。 休日のブランチやちょっとしたガーデニングも、特別な準備を必要としません。

光と風を“面”で取り込む計画がしやすい

中庭やL字・コの字・ロの字配置は、複数方向からの採光と通風をバランス良く取り込むのに有効です。窓の大きさだけでなく、天井の高さ、 ハイサイドライト、軒の出を組み合わせれば、四季のゆらぎに寄り添う快適性が生まれます。

縁側・深い庇・格子がつくる“半屋外の居場所”

直射日光や雨、近隣からの視線をやわらげる緩衝帯があると、屋外が一層使いやすくなります。縁側や深い庇の下は、 読書も昼寝もはかどる「第三の居場所」。内外の仕上げを連続させると、心理的な距離もさらに縮まります。

将来の変化に寄り添えるフレキシビリティ

子育て期は庭遊びの見守り動線、高齢期は段差のない移動のしやすさが生きます。可動間仕切りや多目的室を備えれば、 ライフステージの変化にも柔軟に対応できます。

使い勝手を底上げする小さな工夫

  • 物干し・家事室をテラスに近接配置(洗濯動線が短くなる)
  • 外収納(園芸用品・アウトドアギア)を勝手口近くに
  • 屋外コンセント・外部水栓・照明の位置を初期段階で決定

設計の考え方と間取りの要点

ゾーニング:庭を“部屋のひとつ”として扱う

玄関からパブリック(LDK)—テラス—庭へは視線と動線を一直線、個室群は静けさを優先してワンクッション置く。 家事は「洗う→干す→しまう」を屋外と近接させ、ストレスを減らすことも可能です。

ゾーン主な機能庭との関係
パブリックLDK/土間/客動線大開口・テラスで面として接続
プライベート寝室・子ども室・書斎視線コントロール重視の小窓・坪庭
サービス家事室・水まわり・収納物干し・外部収納と短距離連携

開口計画:抜け・遮り・包まれを設計する

「抜け」のある大開口は気持ちよさの源泉ですが、直射や視線の侵入には「遮り」(庇・袖壁・縦格子)で応えます。 さらに庭に向かう小さなアルコーブやベンチで「包まれ感」をつくると、座りたくなる居場所が生まれます。

図解:ロの字型平屋(中庭パティオ)のイメージ

個室A
学習・就寝
回廊デッキ
屋根付
個室B
書斎/客間
中庭(パティオ)
水まわり群
家事室・浴室
LDK
大開口→テラス→庭
主寝室
将来の可変性

中央に庭、周囲に居室と回廊。採光・通風・プライバシーのバランスが取りやすい。

外と内の素材をつなぐディテール

室内床材と同系色のタイルをテラスに用いる、天井材を軒天へ連続させるなど、素材の連続性は“空間の一体感”を強く生みます。 夜の庭は足元と壁面をやさしく照らす間接照明が効果的です。

家事・収納×テラスの直結計画

  • ランドリー→物干し→ファミリークローゼットを一直線
  • 勝手口のそばに外部収納(ホース、剪定道具、BBQツール)
  • 雨天用に軒下物干し+“干す⇄畳む”の動線短縮

横浜で成功させるポイント

敷地と方位の“読み取り”から始める

高低差のある住宅地や道路と近い前庭など、横浜では敷地条件が多様です。まずは日照・通風・近隣窓の位置を把握し、 必要な視線カットと抜けを見極めます。囲い庭や坪庭は、密集地での力強い味方です。

傾斜・段差を味方にするスロープデザイン

法面や段差は植栽帯に置き換え、眺めの層を増やします。玄関—テラス—庭は緩やかな勾配でつなぎ、将来の使いやすさも確保します。

気候対応:庇・ルーバー・植栽の三位一体

夏は庇と落葉樹で日射を調整、冬は葉が落ちて光を招き入れる。東西の低い日差しには縦格子や袖壁が有効です。 風の通り道を塞がないよう、生け垣と塀は高さと透過率のバランスを検討します。

雨仕舞と排水:屋外の使い勝手は雨の日で決まる

  • テラス勾配は外へ1/100〜1/50を目安に
  • 暗渠排水やドライエリアで水の逃げ道を確保
  • デッキ材は濡れても滑りにくい仕様を選定

音・視線・におい——近隣との付き合い方

道路側はクッションゾーン(植栽帯・収納・土間)を挟み、庭側は静けさを守る配置に。窓種の選び分け(すりガラス・高窓)も併用することも有効です。

チェック:計画初期に決めておくと良いこと

  1. 「どの季節・どの時間」に庭を一番使いたいか
  2. 近隣からの視線方向(上・横・斜め)の確認
  3. メンテ頻度の上限(植栽や木部の手入れレベル)

進め方とコスト戦略

設計の進行ステップ

段階主な内容アウトプット
ヒアリング暮らし方・庭の使い方・将来像を共有要望整理シート
現地調査方位・日影・風・高低差・近隣窓の確認敷地レポート
概念設計庭の核を定め、建物を添わせる構想配置&ゾーニング案
基本設計開口・動線・素材・外構を統合平断面・仕上げ方針
実施設計納まり・設備・雨仕舞・照明まで詳細化図面一式・見積用資料

コスト配分は“効くところに効かせる”

優先投資理由
外皮性能(断熱・気密)快適性と光熱費に直結。窓と庇の質を高めると効果が大きい。
開口・庇・テラス庭との一体感の中核。日射調整と使い勝手が向上。
外構・植栽・照明内外の連続感と夜の居心地を生む。手入れのしやすさも併せて計画。

装飾的な仕上げを増やすより、シンプルな構成で“体験価値”に寄与する要素へ配分するのが基本です。

メンテナンスと素材選定

  • 外壁:左官・金属・焼杉など、耐候性と経年変化の味わいで選ぶ
  • 床:屋内は木、屋外は耐滑性タイルや木材(木質系デッキ)で連続感を演出
  • 木部:庇の出や日射条件に応じて塗装周期を想定し、色も計画的に

まとめ

庭は「眺める場所」から「使う場所」へ。平屋の直線的な動線と、縁側・庇・中庭という緩衝帯を丁寧に設計すれば、 屋内外は自然につながります。横浜の敷地条件を読み解き、建築と外構を同時に設計する—— それが、日々の体験を静かに底上げする最短ルートです。

FAQ(よくある質問)

Q. 中庭はどれくらいの広さがあれば機能しますか?
A. テーブル+動線で3〜4帖ほどから。「採光・通風の核」にする場合は周囲の建物高さや方位を踏まえ、開口の取り方で補います。

Q. 平屋は広い敷地がないと難しいですか?
A. コンパクト敷地でも、囲い庭や二つ庭(前庭+小さな坪庭)で距離感を演出できます。細長い敷地なら通り庭の戦略が有効です。

Q. コストが心配です。どこから優先すべきでしょう?
A. 外皮性能と開口・庇・外構の質が日常の満足度を最も左右します。装飾より“効くところ”へ集中的に配分しましょう。

Q. 近隣からの視線が気になります。
A. 塀・生垣・格子・袖壁を重ね、視線をコントロール。窓は高窓や縦長FIXなどで光は入れて視線は外す設計が有効です。

Q. 設計事務所に相談するメリットは?
A. 敷地の読み取りから外構・植栽・照明まで統合的に検討でき、将来の使い方やメンテまで見通した提案が可能です。

本記事は一般的な考え方をまとめたガイドです。実際の計画では、敷地条件や構造・法規、暮らし方の要件によって最適解は異なります。 横浜での家づくりをご検討の際は是非ご相談ください。

住まいづくりやその他建築計画のことについて夢やご希望、ご予算、悩まれていること等どんなことでも構いませんので先ずはお気軽にご相談ください。