コラム

外観デザインは、街との関係から考える

敷地環境と建物の用途から考える、住宅・店舗の外観デザイン

住宅や店舗を設計するとき、外観デザインは建物の印象を決める大切な要素です。建築として美しいこと、住む人や使う人が愛着を持てることはもちろん大切ですが、私たちは外観を建物単体の美しさだけではなく、周辺環境や街並みとの関係まで含めて考えるようにしています。

なぜなら、一つの建築は完成した瞬間から街の一部になるからです。住宅は個人の所有物であり、店舗や施設は企業や事業者の所有物ですが、道路を歩く人から見れば、それぞれの建築は街並みをつくる一つの風景でもあります。一軒一軒の住宅や店舗、事務所などが集まり、その地域の景観や雰囲気をつくっています。

そのため外観を考える際には、建築としての美しさを追求すると同時に、この建築がここに建つことで、周囲の景観にどのような影響を与えるのかを考えることを大切にしています。

また、住宅の外観デザインにも、すべての敷地に共通する一つの正解があるわけではありません。周囲に建物が少なく開けた敷地と、住宅が近接する都市部の敷地では、建築と外部との関係そのものが異なります。今回は、異なる環境に建つ2つの住宅と一つの店舗建築を通して、敷地環境や用途から外観をどのように考えているのかをご紹介します。

開かれた敷地の住宅 ― 周囲の風景を取り込む外観

周囲に比較的ゆとりのある敷地では、その環境を生かし、水平方向への広がりを意識した外観を考えることができます。

約17mという長い間口を持つ平屋では、白い壁面にガレージシャッターや玄関まわりの素材、植栽を組み合わせ、要素を増やしすぎず建築全体のプロポーションを整えました。間口の広い平屋は、それだけでも建築として強い存在感を持ちます。そのため、形や素材による装飾を加えていくのではなく、壁面や開口部の位置、素材の切り替えなどを整理することで、シンプルな構成の中に建物の特徴をつくっています。

また、建物の一部には向こう側の景色まで見通せる場所を設けています。建築そのものだけで外観を完結させるのではなく、その先に見える空や周囲の風景も外観の一部として取り込むことを意識しました。周辺に開くことのできる敷地では、必要以上に建築を閉じるのではなく、その土地が持っている広がりや風景との関係を建築に取り込む。外観デザインもまた、その考え方から生まれています。

住宅密集地の住宅 ― 閉じながら開く外観

一方、東京や横浜などの住宅密集地では、外観に対して異なる考え方が必要になります。道路や隣家との距離が近い環境では、外部に対してそのまま大きく開くと、道路や隣家からの視線が室内まで届いてしまいます。その結果、窓があってもカーテンを閉めて過ごす時間が多くなり、外部とのつながりを十分に生かせないことがあります。

そこで、必要な部分では街に対して閉じながら、視線の抜ける方向や上空に向かって開くことで、プライバシーと開放感の両立を考えています。濃色のシンプルな外壁や開口部の構成も、外観だけを特徴的に見せるためにつくったものではありません。内部での暮らし方や光の入り方、道路や隣家からの視線などを検討した結果が、建物の外観として現れています。

都市住宅では、窓の大きさだけではなく「どこに、どのように開くか」が重要です。周辺環境を読み取り、閉じる場所と開く場所を丁寧に選ぶことで、街に対しては静かな表情を持ちながら、内部では光や空を感じられる開放的な空間をつくることができます。

私たちは外観だけを切り離してデザインするのではなく、間取りや断面、窓の位置、光の入り方、プライバシーといった内部空間の設計と外観を一体として考えています。住宅密集地では特に、周囲との距離や視線を読み取ることが、その住宅ならではの外観をつくることにつながります。

店舗建築 ― 地域に開かれた風景をつくる

店舗建築では、住宅とは異なる外部との関係が求められます。道路から存在を認識してもらうことも重要ですが、大きな看板を設置したり、建物を派手にしたりすることだけが店舗を印象づける方法ではないと考えています。

交通量の多い交差点に面した店舗では、建物単体を強く主張させるのではなく、建築、庭、植栽、アプローチ、照明を一体として計画しました。道路から見たときに建物だけが目に入るのではなく、緑や光、人が過ごしている様子まで含めて、一つの風景として感じられることを意識しています。

さらに、ここでは視覚的なデザインだけではなく、目には見えない「音」も環境を構成する重要な要素として考えました。交通量の多い交差点という敷地環境に対して水景を設け、水景から生まれる水音を重ねることで、車の走行音などが意識されにくい音環境をつくっています。交通量の多い場所でありながら、庭の中では少し落ち着いた感覚を得られるようにする。視覚だけではなく聴覚にも働きかけるサウンドスケープとして、目には見えない部分まで含めてデザインしています。

また、時間によって変化する光も、この建築を形づくる要素の一つです。昼間は植栽や水景がつくる風景が現れ、夕方から夜にかけては庭や軒下から漏れる光が道路側へ広がり、街角に柔らかな明るさが生まれます。建築は一日を通して同じ表情をしているわけではありません。時間とともに変わる自然光や照明、植栽、水の音まで含めて、その場所の環境をつくっています。

店舗を利用する人だけではなく、その前を歩く人や車で通る人にとっても、少し気持ちのよい風景になることを目指しています。商業建築では強い広告表現だけに頼らなくても、「あそこは雰囲気がいい」「少し入ってみたい」と感じてもらえる建築をつくることができます。建築と外構によってつくられる風景そのものが店舗の個性となり、地域との接点にもなっていくと考えています。

敷地や用途によって、外観デザインの答えを変える

この3つの建築は、規模も用途も敷地環境も異なります。そのため、外観デザインの答えも同じではありません。

周囲にゆとりのある住宅であれば、敷地の広がりや周囲の風景とのつながりを生かす。住宅密集地であれば、プライバシーを守りながら光や空との関係をつくる。店舗であれば、建物だけではなく庭や植栽、照明、時間による光や明るさの移ろいを含めて、地域に開かれた風景をつくる。

私たちは、着想の原点として、その土地の特徴や周辺環境、建物の用途、そこで営まれる暮らしや活動を読み取りながら外観を考えることを大切にしています。あらかじめ用意されたデザインやスタイルを敷地に当てはめるのではなく、その場所だからこそ生まれる建築のあり方を探していきます。

一方で、敷地や用途が変わっても共通して大切にしていることがあります。それは、シンプルでありながら、その建築が街の中に存在したときに、周囲の景観にとってプラスになる佇まいをつくることです。

一つの建築から、街並みを考える

一つの建築は、個人や企業の所有物です。しかし、その一つひとつの建築の集合体が街並みをつくり、地域の景観をつくっています。そして建築は一度完成すると、その場所に長い年月存在し続けます。

だからこそ建築を設計することには、その建物を使う人に対する責任だけではなく、街や地域に対する責任もあると考えています。

もちろん、建築として美しいことや格好が良いこと、目立つことなども大切な要素です。しかし、それだけで建築の価値が決まるものではありません。植栽計画によって道路沿いに緑のうるおいが生まれたり、夜の照明によって街角に温かな風景が生まれたり、建物の佇まいによって周囲の景観が少し整ったりする。建築が一つ加わることで、その場所が以前より少し良くなることが理想です。

個人や企業のためにつくられた一つの建築が、そこに住む人や使う人だけでなく、結果として地域社会にもプラスの作用をもたらす。私たちはこれからも、それぞれの敷地環境や建物の用途から、その場所にふさわしい答えを探しながら、建物単体の美しさだけではなく、その先にある街並みや地域の風景まで豊かにする建築をつくっていきたいと考えています。

住まいづくりやその他建築計画のことについて夢やご希望、ご予算、悩まれていること等どんなことでも構いませんので先ずはお気軽にご相談ください。